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ワイン造りの本質

『ワインの本質』でも触れたように、ワインができてくる過程の根本は酵母によるアルコール発酵にあります。酵母がアルコール発酵を始めるには、その元となる糖分が必要です。その元となる糖分はどこから来るかといえば、ぶどうから来るわけです。

つまりワイン造りというのは、ぶどうを潰してそれをジュースにすると、酵母という微生物がそのぶどうジュースの中の糖分を勝手にアルコールと二酸化炭素に変える、ということです。きわめて乱暴な言い方かもしれませんが、ぶどう果汁さえあれば、その現場に人間がいてもいなくても酵母によるアルコール発酵は起こります。そして酵母がぶどうジュースの中の糖分を完全に消費すれば、発酵は止まり、そこでできた液体は『ワイン』と呼ばれることとなります。

こうして見てきますと、ワインメーカーあるいはワイン醸造家と呼ばれる人たちは一体何をしているのだろうと思えてきてしまいます。ワインができる過程においては、ぶどう果汁に何かを足したり引いたり、あるいは操作したり、発酵途中にワインメーカーが味や香りを操作するということは基本的にありません。すなわち、この段階ではワインは『造る』というよりも『できてしまう』と表現したほうがより的を得ているといえます。

さてではワインメーカーと言われる人たちは何をしているのでしょう。

ワインメーカーはワイナリーで何をしているのか

上記の話では、ワインというのは勝手にできてしまうというのですから、ワイン醸造家といわれる人たちのイメージはくずれてしまうかもしれません。たとえばすばらしい料理をつくるレストランのシェフは素材から自分の意図するとおりに自在に、いろいろな手法を駆使して料理を作っていきます。そして最後には自分がイメージしたとおりの味付けやスタイルの料理を完成させます。ところがワインメーカーの場合は仮に自分が理想とするワインの味やスタイルを持っていたとしても、最終的にできあがって瓶詰めされたワインがかならずしもその理想形になるとは限らないのです。

それはなぜかというと、ワインメーカー(あるいは醸造家)といえども基本的なワインの骨格部分にはタッチできないからです。何度も繰り返しになりますが、発酵というのはワインの造り手がするのではなく、酵母という微生物がおこなうのです。ワインメーカーにできることというのは、『ワインをケアする』ということですが、ワインをどうケアするかというところでワインの個性が少し変わることがあったり、品質に影響が出たりするのです。

ワインメーカーの判断

確かにそこにぶどう果汁さえあれば『ワイン』ができてしまうわけですが、それが味がよいかどうか、飲むに耐えるかどうかは別の話です。特に現代のような商業主義のマーケットにおいては品質の悪いワインは市場から駆逐されてしまいます。

たとえばワインの発酵途中にもワインにはいろいろなことが起こっています。時には不快に感じる物質が生成されたりもします。その不快臭を発酵終了後もそのままに放置しておくと、その不快臭がもっとひどくなってワインではあるけれども商品価値はなくなってしまうということが起こりえます。そんなときはワインの造り手はそのワインに対して何らかの手を打ってワインの品質低下を回避しなければなりません。

また近年は、同じぶどうジュースを原料としても発酵の温度を変えると出来上がるワインの個性がずいぶん変わるというので、どんなスタイルのワインを目指すかで発酵温度をコントロールしたりもしています。発酵終了後もさまざまな場面でワインメーカーは自分が最良と思う手法をワインに対して適用しています。

ワインメーカーにとって第一義的に重要なことは、明らかに欠陥と思われるワインの症状に対して手を打つ、ということです。これは非常に重要なことです。この段階でワインの造り手がその欠陥に気づかなかったり、対処法を知らなかったりすると品質が劣ったワインが市場に出ることになります。実際こうしたワインは流通市場の中で非常に多いというわけではありませんが、まま見受けられます。

ワインの流通市場で問題があると思うのは、上記のようなワインとして欠点を持ったものまでが、その香りや味、あるいは色をそのワインが持つ『個性』だと認識されてしまうことです。この部分についてはここではこれ以上踏み込まず、後で議論することにします。(『ワインの流通と販売に携わる人たちがすべきテースティング』をご覧ください。)

さて、ワインメーカーの仕事に戻りまして、ワインに欠陥部分がなければ、あとはそのワインメーカーの良しとするワインスタイルあるいはイメージに近づけるためにいろいろとワインにケアを施していく、ということになります。この部分は、ワインメーカーのワイン造りに対する『思想』や『哲学』が関わる部分です。たとえば樽材にどういうものを使おうとか、マロラクティック発酵の程度をどれぐらいにしようとか、ファイニングをどうしようとかブレンドをどうしようとか、ワインメーカーのサイドでそのワインに個性を持たせる部分をワインメーカーの判断に従って選択していく、ということになっていきます。


概観しましたように、現代のワイン造りではワインメーカーの手法によってある程度出来上がるワインにそのワインメーカーの個性をある程度与えることも可能になっています。しかしそれにも条件がついていまして、調達された原料ぶどうの品質、個性の範囲内で、ということで、いかにワインメーカーに才能があったとしても原料ぶどうの品質以上のワインは出来ようがないのです。この部分はワインの根本を理解する上で非常に大切なことです。世界中のどんなワインメーカーもこのことは理解していると信じますが、ワインの流通業界に身をおいていらっしゃる皆さんもぜひこのワインの根本部分に注目されると、より優れたワインの取り扱いが進むものと確信しています。